どうも!
今回は『とらドラ!』という作品を紹介します。
電撃文庫のライトノベルが原作で、2008年にはアニメ化もされました。
今作の特徴は、アニメ放映から数年経つというのに、いまだに話題になるということ。
『とらドラ!を見終わったんだけど』という報告スレッドが2chに何度も何度も立つことから、それだけ人の心を動かすのでしょうね。
そんな『とらドラ!』が何故こうも、心を動かすのかを考察していきたいと思います。
簡単なあらすじ
ライトノベルですから、口語体で進み、かつ疾走感のある文体が特徴。
『学園ラブコメディ』というジャンルではあるのですが、最近よくありがちなハーレムものとは一線を画しています。
主人公である竜児はみのりが好き。
そのみのりの友人である大河は、竜児の友人である北村が好き。
そんな二人は、「お互いの恋を応援する共同戦線」を張ることなります。
そんな竜児と大河は様々な友人達と恋に、学園生活に、バカ騒ぎするのですが、まさに青春という感じ。
葛藤しつつも前に進んでいく竜児たち
私がこの作品の魅力と感じるところは、人間らしさ。
登場主要人物は学生として思い悩み、厳しい現実に直面しては悔しがったり嘆いたりします。
異世界に旅立ったり、異端の能力に頼ったりのご都合主義のお話ではなく、極めて現実的な問題。
例えば大河の家庭問題など学生にしては結構辛辣なストーリーも。
竜児だって片親ですし、そういう社会のありふれた問題が噴出します。
それに対して、劇的に良化することなど決してなく、問題は問題として受け入れていくしかない。
高校生が考える以上に社会は厳しく、それと同時に支え見守ってくれている大人の優しさ等を、竜児たちは知っていくのです。
また、1巻2巻あたりはコメディ要素が強く、明るい話ですが、物語が進むにつれ登場人物の内面が浮き彫りになっていきます。
内に秘めたコンプレックスや、心にできたわだかまりなどを、友人達にぶつけたりする結構生々しいシーンもあり徐々にコメディから逸脱していきます。
傷ついた北村を見て、生徒会長に殴り込みにいく大河。
竜児への想いに蓋をして、明るい自分を演じているみのり。
そんなみのりを見て憤る亜美。
みんな仲良く、なんてものは理想でしかなく、綺麗ごとでは立ちいかない。
しかし彼らはそういった問題に直面したとき、衝突し、気持ちをぶつけ合う。
このあたりが只のライトノベルとは言い切れないところなのでしょう。
雪山の修学旅行では、竜児の心情描写が本当に印象的です。
自分の気持ちをなかったことにして押し殺す。
それは簡単なことではなくて、押し殺す心には血が流れ苦しい。
コンプレックスを抱えた主人公
主人公たちにも好感が持てます。
竜児はまず外見的にコンプレックスを抱えている。
『目つき』が酷く悪く、それゆえに誤解を招き、他人を遠ざけてしまっている。
しかし、中身はとても優しくまじめ。
勉強もでき、料理や掃除が得意。
特に掃除は作中でも、これでもか!というくらい竜児がこだわっていることが表現されています。
外見以外では、その家庭環境。
母親は夜の店に勤めており、家も貧乏でカビが生えやすい。
何気なく、普通に描写されていますが、けっこう闇を抱えているんです。
大河はその美貌にそぐわない暴力的な性格。
外見面では背が低いことがコンプレックスかな?
家庭環境でいえば父親の存在が大きい。
大河の実母と離婚の後に、別の女性と再婚。
一見娘のことを優先的に考えて行動しているようにに見えますが、夫婦仲が悪くなるたびに大河と一緒に生活をしたがり、仲直りしてしまえば平気で約束を破る。
大河に無視されたら生活費を振り込まなくなるなど、浮気で身勝手な性格です。
彼女は高級マンションにたった一人、寂しく暮らしていました。
そんな時、竜児に出会い、家族ともいえる付き合いをしていくなかで、依存していってしまうわけですが。
そんな彼らの恋愛のあり方、自分自身の甘さと世界の厳しさの軋み、他人との距離感や進むべき道を、考えながらコンプレックスと正面から立ち向かい、少しずつ歩んでいく姿を描いていく様は色々と考えさせられます。
なんというか、そう。少女マンガに近い感覚かもしれない。
女性作家の著書というのも、そういう思いに拍車をかけているようです。
しかし、今年でアニメ化から8年も経ったんですね。
当時18歳だった私も26歳。
この年になってから、もう一度見返してみるのも良いかもしれませんね。
おわり!